2014年1月1日水曜日

00_プロローグ


いつも遠回りしている自分がいる。
そんな自分のこれまでとこれから・・・。切り離すことの出来ない生い立ちのこと。
エッセイ風に書き溜めていたものを公表しながら、ブログという形にしておこうと思い立ち、スタートさせることにした。
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2010年1月17日。
その日は6,434人という尊い命が犠牲となり、負傷者も4万人を越えた阪神・淡路大震災からちょうど15年という節目を迎えた日。
そして私の新作「レクイエム~あの日を、あなたを忘れない~」の完成初演となった日でもある。
この日のために、私は準備段階からほぼ2年という時間をかけ、何人もの人たちの力を借りながら「レクイエム・プロジェクト」を推し進めてきた。

準備は、被災者の人たちを中心とする市民合唱団を、新たに組織することから始まった。
公募により集まったのは、震災を知らない中学1年生から80歳の方まで。
親子、夫婦、姉妹、なかには親子孫三代という参加者もいた。
すべての世代がそろっていた。その人数は最終的に100人を超えた。当然ながら、合唱経験の無い人たちもたくさんいる。
まさに手作りの合唱団だ。これだけ幅広い世代で構成された大がかりな合唱団は、世界でも珍しいと今でも思っている。

2008年7月から始まった合唱団の練習は月2回。
練習のたびにメンバー数人ずつ自己紹介をしてもらった。10年以上、心の中に閉じこめてきた思いや、これまであまり口に出さなかった震災時の体験を語り始める。
次第にみんなが心を寄せ合い、思いを重ね、追悼と希望のハーモニーは形を整えていく。並行するように、ひとりひとりの心の闇に光が灯り始めた。

「いのち」をきちんと見つめることで、みんなの心が少しずつ元気になっていく。そのプロセスはまさに「レクイエム・プロジェクト」という名前にふさわしいものだったと思う。

1年半に及ぶ合唱の練習、そして途中2009年1月17日の一部分初演を経て、いよいよ完成初演を迎えた2010年1月17日。
 プロのオーケストラと声楽家、合唱団そしてスタッフ総勢158名。そして客席にはほぼ満席の2千人近い来場者。通常のクラシック・コンサートとは違う。みんなが共通の思いを抱いて、その場所にいる。

そんな中、レクイエムの演奏は始まった。
やり場の無い怒りと悲しみ。
15年というある意味長い時間でも解決できなかった心の闇。
亡くなった人たちへの追悼と同時に、生かされたことへの思い。
未来に託したい願い。


みんなありったけの思いを込めて歌った。
とめどなく涙が溢れ、頬を伝った。

そして希望に向かう終曲が終わった後、万雷の拍手の中、
明るく生き生きとした笑顔がそこにはあった。
輝いていた。

このプロジェクトに関わった時間の中で、ひとりひとりが心の重荷をひとつまたひとつ降ろしながら辿ったプロセスの結果だったように思う。

プロジェクトを始めて5年半。
あの時は、想像もしなかった東北の地でのレクイエム・プロジェクトが始まっている。

次回 01 <第1章 「記憶」のなかの原石> いか焼きが宙を舞う はコチラ



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