2014年1月24日金曜日

13 <第1章 「記憶」のなかの原石> 雪の日のスカボロー・フェア


ブログと連動した未発表の編曲作品「スカボロー・フェア」を下記にアップしています。
http://youtu.be/_eCLIMxCVuI
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中学になるまで、我が家にはレコードというものが無かった。
 両親ともレコードを聴くほどの音楽愛好家でもなかったし、贅沢なものだったと思う。

中学の入学祝いに、ようやく安価なレコード・プレーヤーを買ってもらうことになる。
初めて自分の小遣いで買ったレコードは、ヴァン・クライバーンが演奏するショパンの「別れの曲」が入ったシングル盤だった。
ピアノを習っていたからということもある。もうひとつは「ピアノで練習する曲を聴いて勉強するために、お祝いはレコード・プレーヤーにして欲しい」と親に言った手前、やはり最初はピアノの曲が入ったレコードが必須だったからだ。

でも本当の目的は別のところにあった。
小学校6年頃からお古のポケット・ラジオで深夜放送を聴き始めていて、その影響もあって洋楽のポップスや映画音楽に興味が湧いていた。
「中学に入ったら深夜放送で気に入った曲のレコードを買って聴きたい」というのが最大の理由だ。

ゼーガーとエバンスの「西暦2525年」というシングル・レコードが最初に買ったお気に入りの洋楽ポップス。
その後中学時代はクリフ・リチャードの「しあわせの朝」、カプリコーンの「ハローリバプール」、ハミルトン,ジョー・フランク・アンド・レイノルズの「恋のかけひき」、ポップ・トップスの「マミー・ブルー」、カスケーズの「悲しき雨音」、ドーンの「ノックは3回」や「幸せの黄色いリボン」、ショッキング・ブルーの「悲しき鉄道員」、ポール・マッカートニーの「アナザ・デイ」などを買っていたが、お気に入りが全て買えたわけではない。
そんなレコードの中で一番大切にしていたものが、サイモン&ガーファンクルの2枚組LPだ。当時のCBSソニーが出していた「赤箱」シリーズのひとつで、ベスト盤ともいえる。私たちの世代は、ビートルズも聴いたが、いわゆるビートルズ世代とは違う。どちらかといえば、サイモン&ガーファンクル世代なのだ。

私のもうひとつの楽しみは、深夜放送を聞きながらヒット曲を予想することだった。上位に上がる前に「この曲はヒットしそう」などと予想して楽しんでいた。けっこう当たる確率が高かったので、嬉しかった。
それにしても、中学生の頃に聞いていたラジオ番組は面白い。一つの番組の中で歌謡曲、洋楽、演歌、映画音楽などのインスト曲が混在して流れていた。好き嫌いは別にして、いろんなジャンルの音楽を聞くことができたことは、意外にいまの仕事に役立っているかもしれない。

高野山にはレコード・プレーヤーが無かったので、中学三年の時にスピーカと一体となった小さなものを高野山で買い、行くたびにレコードをもって出かけた。
高野山高校に進学することが決まっていた冬休みは、気持ちも違っていた。
その年の冬は、いつもに増して寒く、毎日のように雪がしんしんと降った。昼間でも町の中は静まりかえっている。
耳を澄ませると、サワサワという雪が積もる音が聞こえてくる。
その音を聞きながら、中学3年生の初めに転校していった親友のNくんに手紙を書いた。

予想もしていなかった進路になったこと。自分で納得をしたはずなのに、これからどうなっていくのか、とても不安なことなどを、書き綴った。

手紙を書き終え、レコードに針を落すとサイモン&ガーファンクルの「スカボロー・フェア」が静かに流れてきた。
降り続く雪を見ながら、悲しくなった。
 

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